こちらのページでは、ハウスクリーニングの観点から知っておくべき、水の性質に書いています。難しいお話なので、清掃業者さん向けのページになります。
ご家庭の蛇口をひねると出る水は、地域によって性質が異なります。
この原因は、【原水】といって水道水の元となる水の成分が地域によって違うからです。
原水を体に取り入れても問題ない水につくり変える浄水場という施設があります。
今回は名古屋市千種区にある水の歴史資料館、鍋屋上野浄水場に行き、この尾張地方の水質の違いに関するお話を聞いてきました。
なぜ、そんな話を聞いてきたかというと、
私は、ハウスクリーニングという仕事柄、長年この水道水の性質の違いに興味を持っていました。
原水には微量のマグネシウム、カルシウムが含まれます。原水のこの鉱物(ミネラル)の量の違いが、そのままご家庭の汚れに直接かかわってきます。
なぜ、A地域では硬水(水垢汚れ強い)で、B地域では軟水(水垢汚れが少ない)なのか?
この疑問を払拭させてきました。
難しい話になりますが、水回りのハウスクリーニングに従事する方、ご自宅の浴室に白っぽい汚れが強く表れる方には興味を持ってもらえる話だと思います。
まずは、基本的なお話。各家庭に供給される水の流れについて。
各家庭に供給される水は、県や市が管理している浄水場で作られます。
浄水の工程としては、
1、河川から引っ張ってきたり、地下水をくみ上たりして浄水場に集める。
2、そこで、安全な飲み水につくりかえる。
3、それらは、配水場に移る。
4、そこから、各家庭に供給される。
この流れが基本です。
水の硬水、軟水とは?
硬水、軟水の定義は、水に含まれるミネラル分(主にカルシウム、マグネシウム)がどれだけ溶け込んでいるかという違いです。このミネラル分が多いと硬水、少ないと軟水といいます。
ポイントは原水です。
この私の地元である愛知県の北部エリア(尾張エリア)に関しての話になりますが、
原水は3種類。
①木曽川の表流水…木曽川を流れている水そのものが原水。いわゆる軟水となります。
②木曽川付近地域の伏流水…木曽川付近の地下水をくみ上げて原水としている。原水(伏流水)はミネラル分が多くいわゆる硬水となります。
③その地域の地下水(深井戸水)…原水(地下水)はミネラル分が多くいわゆる硬水となります。
原水はこのどれかに大別されます。
ミネラル分が多いと、浴室やキッチンの流し台などは水道水が蒸発した後のカルシウムやマグネシウムが残留成分となり、どんどん堆積すると白っぽい水垢(みずあか)汚れとなります。
これは一宮市のあるお宅の浴室の水垢汚れ
言葉の意味
表流水…河川、湖沼の水のようにその存在が完全に地表面にあるものをいいます。ここでいう表流水とは木曽川を流れている水そのもの。他にはダムの放流水、湧き水も表流水の区分です。
伏流水…河川周辺の下層エリアを流れている地下水(土壌水)で、地表の河川との水理的な関係が強いもの。木曽川に近いエリアの地下水です。
地下水(深井戸)…井戸水面までの距離が30m以内を深井戸水。地下水の事です。
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名古屋市の水道水は全域が軟水
名古屋市内の各家庭に供給されている水道水に関して言えば、すべて木曽川の表流水を原水100%としてる軟水です。(※一部、自治体レベルの狭い範囲で地下水を使用しているエリアがあるかもしれませんが。)
名古屋市中心部から北に30キロほどに犬山市があります。
犬山市には木曽川が流れ、そこに設けられている取水施設から春日井と千種区の鍋屋上野浄水場まで原水を引っ張ってきて、水道水につくりかえています。
そして、その水が各家庭に供給されています。(大治にも名古屋市向けの浄水場があります。ここも原水は木曽川100%です。)
木曽川表流水のミネラル分は少なく、その水を原水割合100%で使用しているため、名古屋市の浴室などの水垢汚れが軽いのです。
この地方の硬水エリア~一宮市を例に~
一方、名古屋北西部に位置する一宮地方を中心に木曽川の伏流水(硬水)、各地域の地下水(硬水)をくみ上げて原水100%として使用している浄水場があります。
その水が供給されている地域の水道水は硬水となります。
一宮地域の浴室などの水回りの水垢汚れが、きつくはっきり見られるお宅が多いのはこのためです。
しかし、一宮市の中でも木曽川の表流水(軟水)を浄水して供給されている地域があり、そのような地域は軟水となります。
名古屋市内のお宅に供給されている水道水はすべて軟水である木曽川表流水100%が原水ですが、
一宮市の場合は、軟水である表流水、硬水である伏流水:地下水が原水です。(これらのブレンド水もあります。)
一宮市内でも硬水のお宅、軟水のお宅があるのはこのためです。
原水のブレンドもあります。
例えば名古屋市の北となりの春日井市の話になりますが、各家庭に供給される水道水の性質の違いは3つに大別されます。
1、原水が、100%地下水エリア
2、原水が、100%木曽川の表流水エリア
3、木曽川の表流水に、春日井市の地下水をブレンドした水(原水)が浄水され供給される家庭
1エリアは、地下水100%なので、硬質です。
2エリアは、ミネラル分が少ない河川の水が100%なので、軟水です。
3エリアは、軟水に硬水が混ざったブレンドされた水が原水のため、軟水でも、硬水でもどちらでもないです。春日井市の場合は、2割ほど地下水を混ぜているようです。
私の地元、岩倉市の水道水の例
岩倉市は、原水が木曽川の表流水と深井戸水のどちらかです。
これが、岩倉市の給水区域図です。
色のついたエリアが地下水で硬水、ピンク色が表流水(木曽川の水)で軟水です。
※色のついたエリアは原水がブレンド水の場合もありそうです。
この区域図上では、私の自宅は(地下水)深井戸水エリアで硬水エリアとなります。
浴室の鏡は白いウロコ汚れが強く、キッチンの蛇口周りもすぐにカリカリした水垢汚れが成長します。
※こちらのページでは、日本の原水、浄水場出口などの水質データを公表しています。
なぜ、伏流水、深井戸水を使用するのか?
ひとつは、災害対策のためだと聞かされました。浄水場がいくつもあれば、どこかがストップしてもどこかでまかなえますから。
ひとつは、昔ながらの歴史が関係しているようです。昔は浄水が整備されていなかった時代、地下水をくみ上げていました。その名残です。
もう一つは、伏流水や地下水はそれ自体がキレイな場合が多いので、あとは塩素消毒をすれば飲み水として利用できるというお手ごろさがあるようです。
実際に、私の自宅に供給されている原水(地下水)施設を見に行きましたが、100㎡くらいの小さな施設でした。
また、
木曽川付近の伏流水、地下水は水質が良いようです。
名古屋市内の地下水は水質が悪いようです。そのため、名古屋市内では地下水を原水として利用できないとの事。
ヨーロッパは日本の10倍も硬水
余談になりますが、
日本の水は軟水の範囲です。
日本のミネラルの平均値を数字で表すと40~80だそうです。
表流水は15~25。
伏流水や地下水は40~120です。(伏流水、地下水でも比較的ミネラルの少ないエリアもあるようです。)
ヨーロッパの水は硬水です。ミネラルの平均値は1200ほどだそうです。
日本と比べ10倍もミネラルが多い硬水です。
このため、石鹸が泡立ちにくく汚れが落ちにくい。洗濯機は2時間ほどかかるそうです。
ワインやシチューがおいしいのもこの硬水に合っているからだそうです。
硬水か軟水の違いは、原水に溶け込むミネラルの影響です。
日本に比べ、ヨーロッパの土壌はミネラルが豊富だそうです。
まとめ
われわれハウスクリーニング業者の会話の中では、「〇〇地方の水は硬くて困る」という会話表現があります。
正確には、○○地方であっても、その中でも「表流水を原水としている軟水地域」は存在します。
同じ町内であっても、端と端では、原水が異なるケースもあるので水質も違ってきます。
(一宮市に千秋町という大き目の町があります。ここは、西部は100%が表流水、東部は地下水100%です)
軟水か硬水かどうかは、浴室などの汚れ方を観察するとすぐにわかりますね。
どっちつかずの場合は、原水がミネラルが少ない地下水か、表流水に地下水がブレンドされています。